解体工事において騒音を抑えるには限界がありますが、環境省が定めた規定によって、騒音は85db(デシベル)、振動は75dbまでとされています。
この基準を守らないで解体工事を行った解体業者に対しての苦情が入り、実際に裁判が行われた事例がありました。
原告の主張
- 本件工事は周辺の住環境に適切な工法ではない
- 騒音が100dbを超える日もあった
- 100dbを超える日がかなりの割合を占めている
- 振動が90dbを超えていた
- 基準値を超える騒音、振動が発生していたのは明らかである
- 原告の1人はこの振動により、動悸が激しくなり、医師から虚血性心疾患の診断を受けた
- 被告の説明が不十分だった為に、原告らは対処の方法が分からず、体調を崩す者もいた
- 振動によって様々な損傷がある
- 騒音及び振動は原告らが受忍すべき限度を超えている
- 精神的苦痛に対する慰謝料、原告ら住居の修補費用を支払って欲しい
- 原告らに対して計641万円、及び支払い済みまで年5分の割合を支払って欲しい

被告の主張
- 騒音や振動の軽減処置を講じ、近隣住民に配慮して工事を行っていた
- 条例は特定建設作業を改善勧告等の対象から除外されている。
- 条例上の指定建設作業のついては、日常生活等に適用される規制基準とは異なる
- 騒音、振動が原告らの主張する基準値を超えても違反ではない
- 指定建設作業の基準値を超える騒音及び振動を恒常的に発生させていない
- 条例上の基準値を超えたのは2度だけである
- 突発的な振動の発生があっただけである
- 原告の1人は本件以前から既住症がある
- 原告の症状と本件工事の因果関係は認められない
- 建物の損傷も本件工事の振動との因果関係が認められない
- 本件工事の損傷は原告らが受忍すべき限度を超えるものではない。
裁判所の判決
- 本件推定結果から、数時間は大きな騒音や振動が発生したことは認められる
- 本件工事の騒音及び振動の全てが原告らの受忍限度を超えることはできない
- 原告の症状は本件工事の因果関係があると認めることは出来ない
- 本件工事により、原告ら住居建物に損傷が認められる
- 被告は騒音及び振動の軽減措置を講じており、交渉態度に問題はなかった
- 被告は原告らに約165万円、及び支払い済みまで年5分の割合を支払え
- 被告らに対するその余の請求はいずれも理由がないのでこれらを棄却する
まとめ
騒音や振動の問題は正確に基準値が上回っているかの判断が難しかったり、何かしらの症状が出でもそれが解体工事が原因であるとの証明が難しいことにあります。
しかしこの環境省が定めている基準は本来、国民の健康保全を目的としている為、解体工事について何か問題があれば役所に相談してみるのも良いでしょう。